音楽の話 その5


晴れて無職になった私は 知合いのつてで 京都の某百貨店の紳士服売場でアルバイトをする事となりました。
いわゆるメーカーの販売員というやつです。
今まで色々なアルバイトをしてきて、どれもそれなりにこなしてきたつもりだったので、
「この仕事もなんとかなるだろう。」
という安易な気持で始めたのですが いざやってみるとこれが全然売れない。
というか まず客をつかまえる事すら出来ない。
販売員どうしの競争になんとか勝ってつかまえてもすぐに逃げられる。
やっとの事で売れたと思ったら他のメーカーのものだったり…

一年ぐらいは続けたのですが、自分のバイト代ぐらいの売上しか無かったのであえなくクビ。
その後 喫茶店の厨房の仕事についたものの その店も一年後に潰れてしまいました。


そんな事をしているあいだも音楽は細々と続けていました。
といってもロックバンドやブルースセッションなんかでたまに吹くぐらいで、自分のライブなんかめったに無く
暇をもて余して だらだらと練習ばっかりしてました。

そんな宙ぶらりんの生活を続けていると いろいろな人から仕事(音楽以外)の話があったりして、
そのたびに「よし音楽なんかやめてちゃんと働こう!」と思ったりもするのですが決心がつかずにいました。

そんなある日 ある人が「店をやってみないか?わしが金出すから。」という話があって、
「これはもうやるしかない、音楽をやめよう。」
と決心し、そしてその区切りに ライブを聴きに東京に出かけました。

今考えてみればそれが初めての東京でした。
3日ほどの滞在で何回かライブを聴いたのですが、そのどれもがしょうもない。
結構有名な人達ですよ。
音楽を辞めるというつもりが無ければ色々と聴き方があったのかもしれませんが、
その時の心境ではどれもこれも面白くなかったです。はい。
(単純に聴く耳が無かったのかもしれません。すいません。)

「こんなしょうもないもんを 辞めるとか続けるとか悩んでいたんや。くだらん。」

すべてが馬鹿馬鹿しくなって 店をやる話も断って、また別のバイト先を見付けて働きだしました。
音楽も「楽しいうちはやってりゃいいやん」という気持で細々と続けていきました。

まあ以前と同じ状況なのですが その後はあまり悩まなくなりました。
(考えてみれば、今現在も同じ状況です。とほほ…)


そんなこんなで数年続けているうちに 音楽の仕事もポツポツと入るようになり、収入も安定してきました。
「やっぱり続けてみるもんやなあ。実力がついたからかなあ。」
とその時は思ったりもしたのですが 実は大いなる勘違いというやつでした。

そう、これがいわゆるひとつの"バブル"というやつだったんですね。

つづく




つづき

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